タケノコ(生・水煮)の産地判別
タケノコは、もともと中国河南地方より伝来した孟宗竹がルーツである為、遺伝子分析では、産地の判別は不可能でした。 同位体研究所は、タケノコの産地での生産方法や、分布等を調査し、本年2月より09年産タケノコの収集を開始しました。 国内においては、九州、四国、近畿、東海とタケノコの収穫期の移動に連動して、素性の確かなタケノコを収集を実施しました。 特にブランドとして名高い京都産のタケノコについては、総数100を越える京都各地のタケノコを収集、竹林において収穫時調査等を実施し、タケノコの安定同位体比標準データを構築しました。
中国産タケノコに対して、国産タケノコは、福岡、鹿児島、熊本、大分、宮崎、愛媛、徳島、山口、和歌山、京都、三重、静岡、茨城、福島など多数の地域のタケノコを収集し、総数は、実に400に及びます。 さらにタケノコの部位別の同位体変動の検討など、さまざまな検討を実施しています。
安定同位体比による国産と中国産タケノコの判別
収集された各地のタケノコは、生・水煮処理にて安定同位体比データが集積されました。 また測定の為の検体部位の検討を経て、判別用の標準データが作成されました。
国産・中国産のタケノコの安定同位体比の特徴は、炭素、窒素、酸素安定同位体比により示されます。また同位体研究所は、高品質として名高い京都産タケノコについて、さらに詳細な検討を実施しました。 この結果、京都産のタケノコについて、標準データを作成。 京都産と表示されたタケノコについて、その安定同位体比より、京都産のタケノコの判別を行っています。
国産判別・・炭素・酸素安定同位体比による判別
炭素、窒素及び酸素安定同位体比による国産タケノコの判別方法・・判別精度は、92%
タケノコの安定同位体比の分布は、次のグラフに示します。中国産と国産タケノコは、炭素、窒素、酸素安定同位体比の多元素にて比較した場合、相違が示されます。炭素安定同位体比は、生育環境の厳しさを示し、酸素安定同位体比は、生育環境の水系の相違を示します。
一方、窒素安定同位体比は、生育環境での窒素源の相違を示しています。 日本同位体分析研究所は、国産・中国産の比較の他、京都産と他地域産タケノコの比較等、より詳細な研究を行い、その過程において、いくつかの重要な特徴を見いだしました。
このデータを多変量解析し、得られた判別式による判別の精度は、92%となります。(注意:散布図にあるように、国産グループと中国産グループの境界部分では、国産・中国産の判別の精度が低下します。この為、判別境界付近の分析値を示す場合、個体のばらつきを検証する為にも、別ロットでの検査が推奨されます)
タケノコ判別用基礎データの蓄積。 総数400を越えるタケノコサンプルを収集
安定同位体比を用いた産地判別は、検体中の炭素や酸素などの安定同位体比を測定し、この測定値と、産地素性の明確な標準用のサンプルの蓄積データとの照合により行われます。 照合とは、標準データを統計的に多変量解析し、あるサンプルのデータが、どの群に属するかを判定する為の判別式を得ます。 この判別式に、分析値を入れて得られた判別得点というもので判別されます。 従って、判別精度を高める為には、分析検査精度はもちろん、標準となるデータの蓄積が必要となります。 同位体研究所は、前述のように素性の確実なタケノコ標準データ用サンプルを各地より収集しました。 さらに名産地の京都においては、京都の各生産地より個別に収集を実施、京都産タケノコ判別用の標準データの作成も実施しました。 この京都産タケノコ標準データにより、京都産タケノコ水煮については、より高精度の産地判別検査の提供を可能としています。国産・輸入判別検査において、表示と異なる産地と判別された場合の対応
里芋の国産判別検査を例にとりますと、ある里芋検体の分析を依頼し、その結果、国産と表示されているにも関わらず、中国産と判別されたとします。 この場合の対応の留意点を下記します。
別ロットで検査 |
農産物のロット毎のばらつきも考慮し、別ロットでの確認検査の実施を推奨します。尚、国産と輸入との判別の為の、判別得点が判別境界付近の場合、別ロットでの検査を推奨します。 尚、判別に際して、この判別基準付近の場合、検査報告書に補足が追記されます
安定同位体比による産地判別検査は、高精度ですが、100%の精度ではありません。個体毎のばらつきや、再現性の確認の為にも別ロットでの確認が重要です。 また国産と輸入品が混合された場合などは、同一ロットでの値のばらつきを検証するなどの注意も必要です。 |
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さらに詳細な確認方法 |
安定同位体比分析により得られた値は、その農産物の生育環境の安定同位体比を反映します。 従って、別ロット以外に、同一産地や圃場からの検体を分析するとさらに詳細な検証が可能です。
国産に輸入品が混合された場合など、同一産地のロットのはずが大きな分析値のばらつきを示します。 このような場合、混合についても検討が必要になる場合があります。
同位体研究所は、判別検査の結果については、分析値、判別得点、判別結果に加えて、研究者による推奨コメントを付記しています。 これは、得られたデータが、どのような分布を示し、分析値を解釈する上での留意点を示すものです。 |