In-Situ法により農地などの面での放射性セシウム分布が測定可能に
福島原子力発電所より拡散した放射性物質は、土壌や山林に蓄積されていますが、雨や、落ち葉などにより移動します。これは放射性セシウムの分布が時間経過で変化していく事を意味します。安全な農作物生産のためには、農場全体の放射性セシウムの分布を把握する必要がありますが、排水溝や、吹きだまり、傾斜窪地への堆積など、予期せぬ放射性セシウムの濃縮が「高線量」スポットを形成します。土壌サンプル採取による測定では、サンプル数が膨大になり、測定に時間と費用がかかります。一方、線量計による測定では、肥料中の天然放射性物質である放射性カリウムや、天然の放射性鉛などの存在により測定された放射線量が「放射性セシウム」なのか、天然放射能を含むものか判別が困難です。
携帯型ゲルマニウム半導体検出装置は、これらの問題を一気に解決します。In-Situ法とは野外でゲルマニウム半導体検出装置を用いて、放射性セシウムを測定し、一定面積にどの程度の放射性セシウムが存在するかを精度良く測定できるもので、分析室にサンプルを持ち帰り分析するのに比べて1/10の時間で測定が可能です。地上1mに固定して測定する事で半径数10メートルの放射性セシウム量を精度よく分析でき、かつ搭載されたGPSにより地図上に放射性セシウム分布を反映する事ができます。(詳細は、農地測定を参照)万一、農場内の放射性セシウムの分布が不均一であっても、測定装置を中心とした円上の放射性セシウムの平均を測定できる為、ホットスポットのもれがなくなります。同位体研究所では、さらにヘリコプターに搭載のうえで航空計測を開始します。航空計測により、山林などの測定が困難な地域の放射性セシウム測定が可能となります。(2012年春より)
In-Situ法による測定に用いる携帯型ゲルマニウム半導体検出装置です。NaIシンチレーション検出器が放射性セシウムと、他の天然の放射性物質を区別する能力が劣る為、農地や、天然放射性物質が多い地域では、正確な放射性セシウムの測定には補正が必要となります。FALCON5000は、In-Situ法による測定に対応したソフトにより、高精度に地域単位での放射性セシウムの分布を特定でき、農地や地域単位での精密放射性セシウム分布図の作成を可能とします。