株式会社同位体研究所
         

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精度と迅速性 | 産地判別検査の同位体研究所

精度と迅速性

精密分析と迅速分析の複合による課題の解決

NaI検出器とGe半導体検出器による迅速性と感度の確保(Ge検出器6,NaI検出器7による柔軟な測定体制)

牛肉や稲わら、各種の食品の放射能測定を行う場合、測定装置の特性(特に検出器)を踏まえた測定装置選択が重要です。精密分析(核種)に用いられるゲルマニウム半導体検出器は、各エネルギースペクトルパルスを解析する事で、非常に高いエネルギー分解能を有し、異なるγ線(Cs-134や137)を個々に精度良く測定できます。しかし、ゲルマニウム半導体検出器は、検出感度においては、NaI検出器などよりも低い為、低い濃度の放射能を測定する為には、測定時間をより長く設定する必要があります。一方、NaI検出器の特徴は、良好な感度です。核種別の分解能では劣るものの、短時間に低い放射能含有レベルでも検出する事が可能です。 検出感度が高く、かつエネルギー分解能が高い装置があれば、まさに一台で高精度・迅速検査を遂行できますが、上記のように実際の測定現場では両立は困難です。このため迅速・高精度での測定を行おうとする場合、適切な測定装置の組み合わせが必要となります。 また測定に際しては、検出器が周辺の放射能(環境放射能)から遮断される事が必要です。ゲルマニウム半導体検出器の場合、検出器部分は、厚さ10cmの鉛の遮蔽体の中に設置されます。NaIシンチレーション検出器による測定の場合においても、測定対象の検体を周辺から遮蔽する事が必要です。食品や水の迅速測定用のNaIシンチレーション型の測定装置のいくつかは鉛の遮蔽容器を組み込んでいる為、扱いやすい装置となっています。 しかしながら、環境中には、放射性セシウム134と137が放出されている為、実際の測定では放射性セシウム134と137は個別に測定されています。 この場合は、それぞれの放射性セシウムは、50Bq/kgを基準と考えますので、(Cs-134と137はほぼ50:50で分布している) 必要な定量下限値は、Cs-134、Cs-137それぞれ5 Bq/kgとなります。(50 Bqの1/10)つまり、新規制値への適合について、定量検査を適正に行う場合、放射性セシウム134と137がそれぞれ5Bq/kgの定量下限値を有する定量検査が必要となります。 これが新規制に伴い、ゲルマニウム半導体検出装置による測定が必要となる理由です。

NaIシンチレーション検出器の利用

同位体研究所は、迅速検査・簡易検査用として2種類のNaIシンチレーション検出器を用いた測定装置を利用しています。

LB200・・総放射能量を簡単・迅速に測定できます。ただし放射性カリウム(K-40)などに注意が必要です。

食品や水の総放射能量を迅速に測定します。10分程度で測定が完了し、測定対象のサンプル中の総放射能量が表示されます。(表示は、Bq/kg) 放射能測定に届けられた検体は、まずこのLB200で測定されます。この装置での測定により、検体がどの程度の放射能量を持つかが確認できます。コストも安く、扱いも簡単である事、また野外での測定にも利用できる事から、迅速検査として有効です。 この装置での測定での留意点は、γ線放射能のすべてを検出できますが、天然に存在する放射能(例えば天然の放射性カリウム、ビスマスや鉛など)も検出する為、測定値の扱いには留意が必要となります。 肥料やカリウムを多く含む食品などでは、「放射性カリウム(天然)」を検出する事に留意しなければなりません。(LB200では、放射性カリウムの検出感度を落とすように設計されていますので、通常使用では放射性カリウムの影響は低く抑えられています。しかし、例えば昆布等でカリウムを多く含む検体の場合、測定値に放射性カリウムの影響が生じます)

LB2045(放射性セシウムの含有量を精度良く検出できます。牛肉等の緊急時の検査でも活躍します)

LB2045は、NaIシンチレーション検出器によるγ線スペクトロメーターです。 最大の特徴は、LB200と異なり、総セシウム量(Cs134とCs137の合計)を測定できます。 ゲルマニウム半導体γ線スペクトロメトリーと同様に、γ線のエネルギースペクトルを測定しますので、γ線の核種毎の測定が可能となります。 LB200では、場合により測定値に影響を与えた放射性カリウム(K-40)についても、LB2045では影響を与えない為、放射性セシウムを精度良く測定が可能です。 ただし、ゲルマニウム半導体検出器による測定と比較した場合、エネルギースペクトルを個々に分解する能力が劣る為、放射性セシウムに近いエネルギースペクトルを持つ核種(例えばBi-214など)が存在すると放射性セシウムとして測定する場合があります。この装置での分析については、エネルギースペクトルの分解能力から、測定値がゲルマニウム半導体検出器による精密測定に比較して、やや高めに出る傾向があります。しかし、牛肉の簡易検査などでは、測定値が高めにでる事から、この装置での測定値をもとに規制値適合を判定した場合でも、実際の放射性セシウム濃度が規制値を上回るという危険性は少ない為、測定の容易さと迅速性から、非常に有効な測定装置である事は間違いありません。同位体研究所では、簡易・迅速検査、緊急検査において、LB2045を用いています。

ゲルマニウム半導体γ線スペクトロメトリー(γ線の個別の核種を高精度に特定・定量が可能な、精密分析装置)

CANBERRA GC2020/SEIKO-EG&G SEG-EMS(GEM 20-70)。現在国内では2種類のゲルマニウム半導体検出器によるγ線スペクトロメトリーが使用されています。フランス・アレバグループのキャンベラ社とセイコーEG&G(検出器はORTEC社)が装置を供給しています。 ゲルマニウム半導体検出器は、極低温で作動する為、液体窒素(又は電気冷却装置)が充填された容器内に検出器が組み込まれています。この検出器が厚さ10cmの鉛の遮蔽体の中にセットされており、装置の重量は1トンを超えます。このため装置を設置する場所にも制約があります。 ゲルマニウム半導体検出器は、微弱な装置周辺の放射能も検出する為、設置については、十分な配慮が必要です。周辺からの放射線が十分に低いほど、良好な測定結果が得られます。この装置では、測定対象の検体を鉛容器内にセットし、一定の時間測定を行い、その結果を解析します。ここの核種毎のエネルギースペクトルを精度良く測定しますから、個々の核種の特定、定量が可能です。ただし、検出限界は、装置の設定状況や、測定時間により変動する為、測定にはより長時間が必要となります。 また測定対象の検体については、2Lの測定容器に詰めて測定する方法、100g程度の小型容器に詰めて測定する方法など、いくつかの測定方法があります。測定対象の検体の放射能量に合わせて適切な測定容器・測定時間の設定が効率的な測定には不可欠です。 このため同位体研究所では、今秋より6台体制による精密測定を開始します。従来の3台の精密測定器体制に加え、新たに3台のゲルマニウム半導体検出器を今秋導入し、万全の測定体制とします。ゲルマニウム半導体検出器の台数を確保する事で、ヨウ化ナトリウム(NaI)検出器によりスクリーニングを行いながら、短時間に確定精密検査の実施も可能とするように万全の体制としました。

NaI型とGe型を組み合わせた迅速・精密検査

NaIシンチレーション検出器とゲルマニウム半導体検出器は、感度・分解能にそれぞれの特徴があります。ゲルマニウム半導体検出器が多数あれば、多検体の測定も可能ですが、この装置は、設置場所に制約がある上、非常に高価なため多数の装置の設置は非常に困難です。測定についても、検体より長時間測定が必要なものも多い為、複数の装置による並行測定でないと、多検体を処理する事は困難となります。しかし、個々の核種毎に高精度での測定が可能である為、放射能測定においては、確定検査用に不可欠となります。 NaIシンチレーション検出器を用いた測定装置は、その特徴が高感度・迅速性にある事から、短時間に多数の検体について、おおよその放射能量の測定や、特定の核種の測定において、一次検査としての測定に非常に有効です。 緊急時の牛肉や米、野菜などの測定においては、NaIシンチレーション型の測定装置とゲルマニウム半導体型の測定装置を組み合わせる事で迅速・高精度の測定体系を構築する事が可能です。特に、精密検査用のゲルマニウム半導体検出器をより多数設置する事で、NaIシンチレーション検出器の迅速性の特徴を生かしたまま、多検体を対象に核種別の精密検査を短時間で完了させる体制を有しています。 測定の迅速性を維持する為には、測定検体の放射能量を踏まえて精密測定条件を設定する事が必要な為、受領された検体は、LB200及びLB2045で、総放射能量及び総セシウム量の測定が行われます。この測定は、1検体で数10分で可能です。測定結果を踏まえてゲルマニウム半導体検出器による核種分析を行います。 10分という短時間での確定検査(定量限界は50Bq程度ですが、多検体を迅速に確定検査可能です)から5時間超(20,000秒)まで、測定条件により測定装置を割り振り効率の良い精密測定を行います。福島県内の多核種が存在するような検体については、長時間測定用の測定器で精密分析を行うなど、迅速・高精度分析にむけた取り組みを行っています。 このような装置の特性を踏まえた測定体制を構築する事で、牛肉や米の緊急検査や即日検査など多様な測定のニーズに対応しています。